ドイツ名物プレッツェルの香ばしさを堪能しよう

プレッツェル

素朴な形に秘められた由来

プレッツェル(Brezel)は、ドイツを代表するパンの一種です。その由来は7世紀頃の修道院にまでさかのぼるといわれ、修道士が祈る姿を模して腕を交差させたような形に焼き上げたことが起源とされています。

語源については諸説あり、ラテン語の「bracchiola(腕)」に由来するという説が有力です。中世にはキリスト教の象徴として位置づけられ、断食期に肉や卵を避ける代替食品として重宝されてきました。

特に南ドイツではプレッツェル文化が根付いており、朝のパン屋には欠かせない存在となっています。バイエルン州やバーデン=ヴュルテンベルク州では、毎年のように地域祭で巨大プレッツェルが登場することもあります。なかでもシュパイヤー(Speyer)で開かれる伝統行事「ブレーツェル祭り」は有名です。

このようにプレッツェルは、宗教と地域の暮らしのなかで育まれた食文化として今もなお大切にされています。

独特の食感と風味のひみつ

見た目に特徴のあるプレッツェルですが、食べてみると外と中の質感がはっきりと違うことに驚かされます。表面は光沢のある濃い茶色でカリッと香ばしく、中はふんわりと弾力のある食感が魅力です。

この食感を生み出しているのが「ラウゲン処理」と呼ばれる独自の製法です。焼成前に生地を希釈した水酸化ナトリウム水にくぐらせることで、独特の色合いと皮のハリが生まれます。日本のパンではあまり見られない工程ですが、ドイツではこの方法が広く定着しています。

味わいにも特徴があり、表面の粗塩がピリッと効いたあとに、麦芽のようなやさしい甘みが残ります。濃い焼き色の部分にはほのかな苦みがあり、それが全体の風味に奥行きを与えています。

最近では伝統的な形だけでなく、かぼちゃの種やひまわりの種をトッピングしたものや、バジル入りの変わり種も登場しており、地域や店ごとに工夫が見られます。

組み合わせで広がる楽しみ方

プレッツェルの魅力は、そのまま食べても十分に美味しいことに加え、さまざまな食材との組み合わせで味の幅が広がる点にあります。もっとも定番なのは、バターを挟んだ「バターブレーツェル」です。塩気とコクのあるバターが生地によく馴染み、朝食として親しまれてきました。

軽食として人気があるのは、クリームチーズやチャイブをのせたアレンジです。酸味と香味野菜の風味が加わることで、プレッツェルの香ばしさが引き立ちます。また、ハムやソーセージを挟めば食べごたえのあるサンドイッチになり、昼食としても活用されています。

飲み物との相性では、やはりドイツビールとの組み合わせが定番です。ヴァイスビア(白ビール)やピルスナーなど、軽めのビールと合わせると、プレッツェルの風味を邪魔することなく調和します。とくにオクトーバーフェストでは、ビールと一緒に大ぶりのプレッツェルを頬張るのが風物詩とされています。

このように、プレッツェルは一見シンプルに見えて、食べ方によって無限の表情を持つ食べ物です。素朴ながら奥深い魅力を持ち、ドイツの食卓には欠かせない存在といえるでしょう。